冊子印刷は「きれいに作る」より「使われるか」で考える|現場目線で見た、良い冊子と微妙な冊子の違い

「デザインにこだわった素敵な冊子ができました」と納品した後、実際に使われているかを追跡すると、意外な結果が見えてきます。見た目が美しい冊子が必ずしも活用されるとは限らず、シンプルな冊子の方が何度も手に取られることがあるのです。
長年、様々な冊子の制作に関わってきて気づいたことがあります。「良い冊子」の基準は、デザインの美しさではなく、実際に使われるかどうかだということです。展示会で配られた後、カバンに入れっぱなしになる冊子と、オフィスの机に置かれて何度も開かれる冊子。この違いはどこから生まれるのでしょうか。今回は、現場目線で見た「使われる冊子」の条件をお伝えします。
「見栄えが良い」と「使いやすい」は別物
デザインが素晴らしい冊子なのに、なぜ使われないのでしょうか。
開きにくさが読む気を失わせます。以前、ある企業様がブランドブックを制作されました。表紙は高級な紙を使い、デザインも洗練されていて、見た目は完璧でした。しかし無線綴じで背が硬く、テーブルに置いても勝手に閉じてしまいます。「見た目は良いけど、見にくい」という声が社内から上がり、結局あまり活用されませんでした。
文字が小さすぎて読む気にならないケースもあります。デザイン重視でレイアウトを組むと、余白を多く取り、文字を小さくしがちです。見た目はスタイリッシュですが、実際に読むとなると目が疲れます。特に40代以上の方には、小さな文字は負担になります。
情報が多すぎて、どこを見ればいいか分からない冊子も使われません。「せっかく作るから、できるだけ多くの情報を載せよう」という気持ちは分かります。でも、情報が詰め込まれすぎていると、読者は「後で読もう」と思ったまま、結局読まないのです。
私たちがお手伝いした製品カタログで、お客様が「できるだけ多く載せたい」とおっしゃった案件がありました。正直にお伝えしました。「情報を絞った方が、読んでもらえます」と。最終的に情報を半分に減らし、余白を増やしたところ、「前より問い合わせが増えた」という報告をいただきました。
見た目の美しさと使いやすさ、両立できれば理想ですが、迷った時は「使いやすさ」を優先することをおすすめします。
使われる冊子には「場面」が想定されている
どんな時に、どこで使われるか、想像していますか。
営業資料なら商談の場面を考えます。営業担当がお客様の前でテーブルに広げて説明する。この場面を想像すれば、平らに開く中綴じが適していることが分かります。分厚い無線綴じだと、片手で押さえながら説明しなければならず、不便です。
展示会で配るパンフレットなら、持ち帰りやすさを考えます。来場者はたくさんの資料をもらい、カバンに入れて持ち帰ります。厚くて重いパンフレットは、途中で処分されるリスクがあります。薄くて軽い中綴じなら、最後まで持ち帰ってもらえます。
工場の作業マニュアルなら、汚れても大丈夫な仕様にします。現場で使う冊子は、手袋をした手で触られたり、油が飛んだりします。表紙にPP加工を施す、厚めの用紙を使うといった配慮が、長く使われる条件になります。
ある製造業のお客様が、作業手順書を美しいデザインで作られました。しかし現場では「綺麗すぎて汚したくない」という理由で、倉庫に保管されたままになりました。次回は実用性重視の仕様に変更し、現場で活用されるようになったそうです。
「誰が、どこで、どう使うか」を具体的に想像することが、使われる冊子を作る第一歩です。
「後で見返す」行動を促す工夫
配った後、もう一度開いてもらうにはどうすればよいでしょうか。
すぐに必要な情報と、後で必要な情報を分けます。表紙や最初のページに、すぐ確認したい情報(問い合わせ先、営業時間など)を配置。詳細な情報は後半に配置することで、「とりあえず保管しておこう」という気持ちを促します。
目次を充実させることも効果的です。「どこに何が書いてあるか」が一目で分かれば、必要な時にサッと開けます。目次がない冊子は、全ページをめくって探すことになり、面倒に感じます。
索引や見出しで検索性を高めます。ページの上部や端に見出しをつけておくと、パラパラめくった時に目当ての情報が見つけやすくなります。辞書のように「引く」使い方ができる冊子は、長く活用されます。
保管しやすいサイズとすることも大切です。A4サイズは一般的なファイルに収まりますが、変形サイズだと保管場所に困ります。「どこに置いていいか分からない」冊子は、結局処分されてしまいます。
以前、ある学校案内で「卒業生の声」を別冊にした事例がありました。本編は学校の基本情報、別冊は読み物という構成です。本編は保管され、別冊は何度も読み返されたそうです。情報の性質に応じた設計が、使われる冊子を生みます。
予算をかけるべき場所を見極める
限られた予算の中で、どこにお金をかけるべきでしょうか。
表紙にコストをかけ、本文は抑えるという選択があります。表紙は第一印象を決めるため、少し良い紙を使う、カラー印刷にする。本文はモノクロで上質紙にすることで、全体の予算を抑えながらも、見栄えを保てます。
逆に、本文の情報量が重要な冊子では、ページ数を確保することを優先します。表紙はシンプルにして、その分、本文のページ数を増やす。製品カタログや技術資料では、この方針が有効です。
耐久性が必要な冊子では、製本と用紙にコストをかけます。何度も開く資料、長期保存する冊子では、無線綴じで厚めの用紙を選ぶ。一見地味ですが、長く使われることを考えれば、結果的にコストパフォーマンスが高くなります。
ある企業様が記念誌を制作される際、「表紙は豪華に、本文は実用的に」という方針で進めました。表紙に箔押しを施し、本文は読みやすさ重視で上質紙。メリハリのある予算配分で、品格と実用性を両立できました。
冊子印刷ドットコムでは、予算内で最適な配分を一緒に考えます。「ここは譲れない」「ここは抑えたい」というご希望を教えていただければ、バランスの取れた提案をします。

「使われなかった」失敗から学んだこと
どんな冊子が、結局使われずに終わってしまうのでしょうか。
作り手の自己満足になっている冊子です。「こんなデザインが良い」「この情報も載せたい」と制作者の視点だけで作ると、読者のニーズとずれます。「誰のために、何のために作るのか」を見失うと、使われない冊子になります。
完璧を目指しすぎて、タイミングを逃す冊子もあります。展示会に間に合わなかった、キャンペーン期間が終わってしまった。完成度を高めることは大切ですが、使われる時期を逃したら意味がありません。
更新を想定していない冊子も問題です。情報は変わります。連絡先、価格、製品ラインナップ。更新できない仕様で大量に作ると、古い情報の冊子が残り続けます。小ロットで作り、必要に応じて更新する方が、実用的です。
私たちが反省した案件で、お客様の要望通りに豪華な仕様で作ったものの、「重くて配布しにくかった」というケースがありました。ご要望を叶えることは大切ですが、「本当にその仕様で良いか」を一緒に考えるべきだったと思います。
失敗から学んだことは、「使われるかどうか」を常に問い続けることです。冊子印刷ドットコムは、きれいに作るだけでなく、使われる冊子を一緒に考えるパートナーでありたいと思っています。
冊子は、作ることが目的ではなく、使われることが目的です。デザインの美しさも大切ですが、それ以上に「誰が、どこで、どう使うか」を考えることが、良い冊子づくりの基本です。現場目線で、本当に使われる一冊を一緒に作りましょう。
使われる冊子の条件|要点まとめ
見栄えと使いやすさは別物で、デザインが素晴らしくても開きにくいと読む気を失い、文字が小さすぎると40代以上には負担で、情報を詰め込みすぎると「後で読もう」のまま読まれず、製品カタログで情報を半分に減らしたら問い合わせが増えた事例があります。迷った時は使いやすさを優先することが重要です。
使われる冊子には場面が想定されていて、営業資料なら商談でテーブルに広げる場面を考えて中綴じが適し、展示会パンフレットは持ち帰りやすさ重視で薄く軽く、工場マニュアルは汚れても大丈夫なPP加工や厚めの用紙が必要です。「誰が、どこで、どう使うか」を具体的に想像することが第一歩です。
後で見返す行動を促す工夫として、すぐ必要な情報と後で必要な情報を分け、目次を充実させてどこに何があるか一目で分かるようにし、索引や見出しで検索性を高め、A4など保管しやすいサイズにすることが大切です。学校案内で基本情報と読み物を分冊にして活用された事例があります。
予算配分の見極めでは、表紙にコストをかけ本文は抑える選択、本文の情報量が重要なら表紙をシンプルにしてページ数確保、耐久性が必要なら製本と用紙にコストをかける判断があります。記念誌で表紙は豪華・本文は実用的というメリハリで品格と実用性を両立した事例があります。
使われなかった失敗から学んだこととして、作り手の自己満足で読者のニーズとずれる、完璧を目指しすぎてタイミングを逃す、更新を想定せず大量に作ると古い情報が残り続けることがあります。冊子印刷ドットコムは「本当にその仕様で良いか」を一緒に考え、使われる冊子づくりのパートナーを目指しています。
















