無線綴じの工程を詳しく解説します|ミーリングから糊付けまでの流れ

無線綴じ冊子を注文すると、印刷会社では様々な工程を経て製本が行われます。しかし「どのような手順で冊子が出来上がるのか」を詳しく知る機会は少ないものです。完成した冊子を手にした時、その背景にある技術を理解することで、より適切な仕様選択ができるようになります。
無線綴じは単純に「糊で貼るだけ」ではありません。背を削る工程、糊を塗布する工程、表紙を巻きつける工程など、複数のステップを経て完成します。それぞれの工程が品質を左右し、どこか一つでも不十分だと、強度や仕上がりに影響が出ます。今回は無線綴じの製本工程を、初心者にも分かりやすく順を追って解説します。
無線綴じ製本の全体の流れ
無線綴じはどのような順序で進むのでしょうか。
大きく分けて5つの工程があります。「本文ページの準備」「背削り(ミーリング)」「糊付け」「表紙巻き」「三方裁断」という流れです。これらの工程が順番に実行されることで、一冊の無線綴じ冊子が完成します。
印刷と製本は別の工程です。まず本文ページを印刷し、乾燥させてから製本工程に入ります。印刷直後の紙はインクが完全に定着していないため、すぐに製本すると汚れや滲みの原因となります。
所要時間はどのくらいか。印刷から製本完了まで、通常3日から5日程度かかります。短納期対応の場合は工程を効率化し、翌営業日発送も可能ですが、品質を確保するには適切な時間が必要です。
中綴じとの工程の違いも明確です。中綴じは「折り」と「針金綴じ」だけのシンプルな工程ですが、無線綴じは背削りや糊付けなど、より多くの工程を経ます。その分、時間もコストもかかりますが、仕上がりの品質と耐久性は高くなります。
私が印刷会社の工場を見学した際、無線綴じの各工程が自動機械で正確に実行される様子を見て、その精密さに驚きました。
工程1|本文ページの準備と丁合
製本前の準備工程では何が行われるのでしょうか。
まず印刷されたページを順番に揃えます。この作業を「丁合(ちょうあい)」と呼びます。1ページ、2ページ、3ページと、正しい順序でページを重ねていきます。手作業で行う場合もありますが、多くは自動丁合機が使用されます。
ページ順の確認が重要です。1枚でもページが抜けたり、順番が入れ替わったりすると、完成した冊子が使い物になりません。特に100ページを超える厚い冊子では、丁合のミスが致命的な問題となります。
本文の向きも揃えます。天地(上下)が逆になっていないか、表裏が正しいかを確認します。自動機械でもエラーが起きる可能性があるため、人の目によるチェックも並行して行われます。
紙の状態の確認も欠かせません。印刷時のシワや汚れ、紙の反りなどがあると、後の工程で問題が生じます。不良品は丁合の段階で除外し、良品のみを製本工程に進めます。
丁合が完了すると、本文ページの束が出来上がります。この束が次の背削り工程へと送られていきます。
工程2|背削り(ミーリング)で接着面を作る
背削りとはどのような作業なのでしょうか。
ミーリングとも呼ばれるこの工程では、本文ページの束の背の部分を削ります。回転する刃物で背を削ることで、紙の断面に細かい溝を作ります。なぜ削るのか。滑らかな紙面より、凹凸のある面の方が糊の接着力が高まるからです。
削る深さは0.5mmから1mm程度です。深く削りすぎると本文が欠けてしまい、浅すぎると糊の食いつきが悪くなります。用紙の厚みやページ数に応じて、適切な削り深さが設定されます。
削りカスの処理も重要です。背を削ると紙の粉が発生します。この粉が糊付け面に残っていると、接着不良の原因となるため、エアブローや吸引装置で徹底的に除去します。
削り方には種類があります。単純に平らに削る方法と、波状に削る方法があり、波状に削る方が糊の食いつきが良くなります。高品質な製本では、波状ミーリングが採用されることが多くなっています。
私が担当した企業のマニュアルでは、背削りの精度を高めたことで「5年使っても背が割れない」という評価を得ました。
工程3|糊付けで強度を生み出す
糊はどのように塗布されるのでしょうか。
ホットメルト接着剤が一般的です。この糊は熱を加えると溶け、冷えると固まる性質を持ちます。専用の糊付け機で、背の部分に均一に塗布されます。塗布温度は150度から180度程度で管理されます。
糊の量が仕上がりを左右します。多すぎると背が硬くなり開きにくくなり、少なすぎると接着力が不足します。適切な量を均一に塗ることが、無線綴じの品質を決める最重要ポイントです。
塗布は2回行われることもあります。1回目は薄く下地を作り、2回目で本格的に接着する二度塗り方式です。この方法により、接着力が大幅に向上し、耐久性の高い冊子になります。
冬場は糊の管理が難しくなります。気温が低いと糊が冷えやすく、塗布から表紙巻きまでの時間が短くなります。温度管理された工場環境が、安定した品質を保つために重要です。
エマルジョン系接着剤という選択肢もあります。水性の糊で柔軟性に優れ、温度変化に強い特性があります。ただし乾燥に時間がかかるため、短納期には不向きです。
工程4|表紙巻きで冊子の形を整える
表紙はどのように取り付けられるのでしょうか。
糊がまだ柔らかいうちに、表紙を巻きつけます。表紙は本文より一回り大きいサイズで、本文全体を包み込むように覆います。この作業を「くるみ」と呼び、無線綴じが別名「くるみ綴じ」と呼ばれる理由です。
圧着が重要な工程です。表紙を巻きつけた後、ローラーで圧力をかけて密着させます。この圧着により、糊が表紙と本文の背にしっかり浸透し、強固な接着が実現します。
背の部分の成形も行われます。表紙が背に沿って折れ曲がるように、専用のローラーで背の形を整えます。この成形により、書棚に立てた時の安定性が高まります。
冷却時間の確保も必要です。糊が完全に固まるまで、一定時間置かれます。急いで次の工程に進むと、糊が十分に固まらず、強度が低下します。温度と湿度が管理された環境で、適切な時間をかけて冷却されます。
私が工場で見た表紙巻き工程は、自動機械が次々と正確に作業を行い、まるでベルトコンベアのように冊子が完成していく様子が印象的でした。

工程5|三方裁断で美しく仕上げる
最後の仕上げ工程では何が行われるのでしょうか。
天(上)、地(下)、小口(開く側)の三辺を裁断します。製本後は各ページの端が微妙にずれていますが、三方を裁断することで、すべてのページが完全に揃います。この工程が、無線綴じの美しい仕上がりを生み出します。
裁断機の刃は非常に鋭利です。一度に数百冊を重ねて裁断できる大型の裁断機が使われます。刃の切れ味が悪いと、紙の端が毛羽立ち、品質が低下するため、定期的な刃の交換が必要です。
裁断の精度が重要です。わずか0.5mmのずれでも、完成品の見た目に影響します。特に写真集や作品集など、ビジュアル重視の冊子では、裁断精度が仕上がりの評価を左右します。
中綴じとの違いがここにもあります。中綴じは二つ折りにした状態で背と反対側の二辺のみを裁断しますが、無線綴じは三辺を裁断します。この違いが、仕上がりの美しさに差を生みます。
裁断後は最終検品が行われます。ページ順の確認、汚れやキズのチェック、背の状態の確認などを経て、合格品のみが梱包され出荷されます。
冊子印刷ドットコムでは、これらすべての工程で品質管理を徹底しています。各工程の精度が、長く使える冊子を生み出します。
無線綴じの製本工程は、5つのステップを経て完成します。本文準備、背削り、糊付け、表紙巻き、三方裁断という流れを理解することで、なぜ無線綴じが高品質で耐久性に優れるのかが分かります。各工程の技術が結集した無線綴じ冊子を、ぜひ活用してください。
無線綴じの製本工程|要点まとめ
無線綴じの全体の流れは、本文ページの準備、背削り(ミーリング)、糊付け、表紙巻き、三方裁断の5工程で、印刷から製本完了まで通常3〜5日かかります。中綴じは折りと針金綴じだけのシンプルな工程ですが、無線綴じは多くの工程を経るため時間とコストがかかる分、品質と耐久性が高くなります。
本文ページの準備工程では、印刷されたページを正しい順序で重ねる丁合作業、ページ順・向き・紙の状態の確認が行われ、100ページ超の厚い冊子では丁合のミスが致命的となるため人の目によるチェックも並行して実施されます。
背削り(ミーリング)では、回転する刃物で背を0.5〜1mm削り紙の断面に細かい溝を作ることで糊の接着力を高め、削りカスはエアブローや吸引装置で徹底除去され、波状に削る方が糊の食いつきが良くなります。
糊付けでは150〜180度で管理されたホットメルト接着剤を均一に塗布し、二度塗り方式で接着力を向上させ、冬場は糊が冷えやすいため温度管理された工場環境が重要で、エマルジョン系接着剤は柔軟性に優れますが乾燥に時間がかかります。
表紙巻きでは糊が柔らかいうちに表紙を巻きつけてローラーで圧着し、背の形を整え、糊が完全に固まるまで適切な冷却時間を確保します。三方裁断では天・地・小口の三辺を裁断してすべてのページを完全に揃え、0.5mmのずれも仕上がりに影響するため精度が重要で、裁断後は最終検品を経て出荷されます。
















