プロが教える!きちんと伝わる取扱説明書の作り方

取扱説明書(マニュアル、手引書も含む)は、ユーザーや作業者が製品やサービスを正しく、安全に使用するために欠かせない、重要なツールです。
しかし、皆さんにも心当たりがあるかもしれませんが、多くのケースではそれが十分に読まれず、活用されていないのが現状です。
今回は、使う人にきちんと伝わる取扱説明書を作るためのポイントをご紹介します。
1)取扱説明書の重要性を自らが理解する
取扱説明書は単なる「おまけ」や付属品ではありません。
製品の安全な使用方法や機能を最大限に活用するための情報源であり、顧客満足度にも直結する重要なドキュメントです。
さらに、法的要件を満たし、製造者責任を果たすための役割も担っています。
ユーザーが安全を確保しながら製品を正しく使用する方法を伝えるだけではなく、時にはトラブルシューティングのガイドとなることで、製品の寿命を延ばすことが可能となります。
ひいては皆さんの会社にとって、顧客サポートの負担を軽減することにも繋がるわけです。
2)ターゲットユーザーを明確にする
取扱説明書を作成する際には、ターゲットユーザーを明確にすることが重要です。
ユーザーの年齢層や技術的な知識レベルはもちろん、想定される使用環境(家庭、オフィス、野外など)にも配慮が必要です。
また多言語対応の必要がある場合は、文化的背景も理解しなくてはいけません。
ターゲットユーザーを理解し、適切な言葉遣いや説明の詳細さの程度を決定しましょう。
3)構成に工夫をする
読みやすく、必要な情報にすぐにアクセスできる構成となるように心がけましょう。
・目次を付ける:ユーザーが必要な情報を素早く見つけられるようにします。
・セクション分け:内容を論理的なセクションに分け、分かりやすい見出しを付けます。
・重要情報の強調:安全に関する警告や重要な注意事項を目立たせます。
・ステップバイステップの説明:複雑な操作は、具体的に順を追って説明します。
といったことに配慮しながら構成を検討しましょう。
4)明確で分かりやすい言葉を使う
前述のターゲットユーザーによっては、専門用語や複雑な表現を避け、平易な言葉で説明することが重要となります。
・短い文章となるように心がける:複数行にまたがる文言を避け、簡潔に表現しましょう。
・用語に一貫性をもたせる:同じ機能や部品には常に同じ名称を使用します。
・略語や専門用語の説明:初出時はもちろん、要所要所で説明をしていきましょう。
5)ビジュアル要素を効果的に活用する
文字だけでなく、視覚的な要素を活用することで、記憶や理解を深めることができます。
写真やイラストで製品の外観や部品を視覚的に示したり、複雑な手順や構造を図で説明していきます。
警告や注意を示すためにアイコンを用いる場合は、取扱説明書の中で統一していなければいけません。
また、重要な情報を強調するために色を活用することも大切です。

6)安全性に関する情報は明確に表示する
ユーザーの安全を守るため、安全に関する情報は特に注意して扱います。
一般的に安全上の注意は取扱説明書の最初に配置されます。枠で囲むなど目立つデザインにすることも必要です。
また、説明文は単に「高温注意」だけでなく、「やけどの恐れがあるため触れないでください」など、
「なぜ注意しなくてはいけないのか」「なぜその使用方法は禁止されているのか」を具体的に記述するようにしましょう。
7)使用手順を詳細に説明する
製品の使用手順は、取扱説明書の核心に当たる部分です。
使用前の準備から実際の使用法、使用後の保管方法までの手順を、論理的な順序で説明します。
想定される動作を事前に洗い出し、「もし〜の場合は」という条件付きの説明を明確にします。
また、想定されるトラブルとその解決方法を記載することも必要です。
8)メンテナンス情報を提供する
製品を長く使用してもらうため、メンテナンス情報は重要です。
定期的な清掃方法や部品交換の頻度、消耗品に関する情報や保管方法までを記載します。
9)技術仕様と法的情報を記載する
製品の詳細情報と法的要件を満たすための情報を記載します。
これには技術仕様、保証情報の他、法的免責事項や認証に関する情報、カスタマーサポートの連絡先も含まれます。
10)ユーザビリティテストを実施する
取扱説明書の原稿が出来上がったら、実際に印刷に進む前にテストすることを忘れないでください。
まずは社内で試読し、フィードバックを得ます。
そして、説明の分かりやすさや手順の明確さ、必要な情報を見つけるためにかかる時間を確認しましょう。
集まったデータやフィードバックに基づいて改善点を特定し、納得がいくまで何度も修正します。
11)デジタル版も準備しておく
印刷版だけでなく、デジタル版で取扱説明書を提供することも検討しましょう。
携帯性や更新の容易さなどのメリットがあり、ユーザーの利便性も高まります。
冊子印刷ドットコムではデジタルブックの製作も承っておりますので、ぜひご用命ください。
12)多言語対応
現代においては多言語対応も重要となります。
ユーザーのニーズの高さに応じて、英語以外の言語での提供も必要になるかもしれません。
安易に機械翻訳に頼るのではなく、ネイティブスピーカーやプロの翻訳者によるチェックを行いましょう。
文化によって解釈が異なる表現にも配慮してください。
13)印刷・製本方法
取扱説明書におすすめの製本方法が「中綴じ製本」です。
中綴じ製本はページの中央をホチキスで留める製本方法で、ノド部分(綴じ側)まで開いて見ることができ、無線綴じより安価に仕上げることができるという特徴があります。
無線綴じ(くるみ綴じ)製本に比べ耐久性では劣りますが、本を開いた状態で置く事ができるため、両手を使った作業中でも参照しやすく、ユーザビリティの高い製本方法です。
たくさんのチェックポイントを並べてしまいましたが、どれも「きちんと伝わる取扱説明書」を作るためにクリアすべき項目ですので、ぜひ参考にしてください。
いずれにしても、ユーザーの視点に立ち、分かりやすさと使いやすさを追求することが重要です。
ユーザーにとって価値ある取扱説明書を作ることができれば、製品の価値のみならず、ユーザー満足度の向上にも繋がります。