写真の著作権を理解する:知っておくべき基本と注意点
写真が私たちの生活に深く根付いた表現方法であることについては、今さら語るまでもないことだと思います。
さらに、スマートフォンの普及などデジタル技術の発展に後押しされ、誰もが簡単に撮影できるようになっただけでなく、一瞬にしてその画像を世界に共有できるようにもなりました。
しかし、印刷媒体を制作する際には、自ら撮った写真はもちろん、他社の写真を使用する際にも著作権という重要な法的側面があることを理解しておく必要があります。
今回は、写真の著作権について、私たち制作者が知っておくべき基本的な知識と、トラブルを避けるためのポイントをご紹介します。 そもそも著作物について、著作権法では「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するものをいう」と定義されています。
つまり、単なるコピーや模倣はもちろん、技術的な工夫があったとしても、創作的な表現でなければ著作物としては保護されないというわけです。
また、頭の中で考えているような、行動を伴わないアイデアの段階では著作物とは見なされず、ネガ・ポジ・プリント・データなど、可視化されたものが必要となります。
写真の著作権が発生するためには、登録や申請の類は一切必要ありません。
撮影者が写真を創作した時点で、自動的に発生します。
そしてこれは、専門家でも、アマチュアでも、オリジナルの写真を撮影した人が獲得できる権利なのです。
著作権者には、主に次のような権利が与えられています。
1)複製権
印刷やデータの複製、コピーなど、著作物を複製する権利。
2)公衆送信権
インターネットなどを利用して、著作物を公衆向けに「送信」する権利。
3)展示権
著作物を、展覧会や通行人などが見られる場所に展示する権利。
4) 二次利用権
著作物に基づいた、新たな創作性を保護する権利。
このように、写真に関する権利は広い範囲に及ぶため、第三者が使用する際は十分注意する必要があります。
写真の著作権者の許可なく写真を使用すると、著作権侵害となる可能性がありますから、商用利用はもちろん、個人的な利用であっても、無断使用は法的リスクを伴うことを意識しなくてはいけません。
これらの問題をクリアにしたものが、ストックフォトサイトやフリー写真素材サイトなのですが、複製回数(印刷部数)やクレジットの表記方法など使用条件を事前に熟読し、規約を遵守して利用するようにしましょう。
最近、SNS上で他人の写真を引用した投稿を目にすることが多いと思いますが、厳密には出典を明記したり、事前に許可を得ることが必要です。当然、商業目的で使用する場合には慎重な判断が求められます。
また、写真の著作権とは別に、写真に写っている人の肖像権にも注意が必要です。
特に個人を特定できる写真を許可なく使用したり、プライバシーを侵害する可能性のある写真の公開は控えなくてはいけません。
また、商業利用する際には、「モデルリリース」と呼ばれる撮影対象者の同意が必要となります。
写真の著作権を侵害する危険性と注意点について、いくつかの事例をご紹介します。
1)ブログでの無断使用による高額請求
事例:個人ブログ運営者が、プロのカメラマンが撮影した風景写真をクレジット表記なしでブログに掲載。
その結果、カメラマンから著作権侵害の警告を受け、写真の即時削除や使用料相当額の損害賠償請求を受けた。
ポイント:写真の無断使用には賠償リスクがあり、非営利目的でも、許可なく写真を使用することは認められない。
2)SNSでの写真転用によるビジネス被害
事例:フリーランスのフォトグラファーが撮影した商品写真が、無断で企業の広告に使用された。
その結果、企業は当該写真を使用した広告を即座に削除することを迫られ、損害賠償だけでなく企業の信頼性も毀損した。
ポイント:商業利用の場合、賠償金額が高額になる可能性があり、法務チェックが重要となる。安易な写真転用は、企業の評価を傷つける可能性がある。
3)海外写真素材サイトでの違法ダウンロード
事例:デザイン制作会社が、海外の有料写真素材サイトから、正規ライセンスを購入せずに写真をダウンロードして使用。
その結果、大手ニュースサイトで盗用を報じられ、正規の使用料の3倍以上に当たる賠償金を請求された。現在もなお訴訟手続きが進行中。
ポイント:海外のサイトであっても、正規の手続きを踏まない素材使用は非常に危険。
これらの事例から、次のような対策が求められます。
1)写真の著作権者を必ず特定し、利用許諾の範囲を明確にしておく。
2)信頼できる写真素材サイトを利用し、使用目的に合ったライセンスを購入する。
3)ライセンス購入の領収書や契約書、使用許諾のやり取りやモデルリリースの書類なども正しく保存する。
4)現在使用している写真のライセンスを確認する。過去の制作物についても、正しく写真が利用されているか定期的に見直す。
逆に、ご自身の写真が無断で使用されている場合は、使用者に削除要請や使用料請求を行いましょう。
法的手続きが必要な場合もありますので、弁護士などへの相談も検討するとよいでしょう。
写真の著作権は時にデリケートで厄介な問題に発展しがちですが、まずは撮影者や作品を尊重する気持ちがリスク回避の第一歩となります。
それができれば、自ずと常識的な判断ができ、ルールを逸脱することがなくなるのではないかと考えています。
私たち冊子印刷ドットコムは、無線綴じ(くるみ綴じ)印刷・中綴じ印刷で長年にわたりご愛顧いただいておりますが、お客様からのご依頼でデザイン制作も承っております。
その際も、常に写真の取り扱いについては意識するよう心がけております。
ワンクリックで写真が共有できる時代だからこそ、その利用にはより慎重でありたいものです。