冊子からぬくもりが伝わる、手書き文字の魅力
冊子づくりの現場にDTP(パソコンによる印刷データ制作)が普及し、活字からデジタルフォントに移行してもなお、手書き文字の持つ独特の温かみと表現力は衰えていません。
印刷物に手書きによる文字を取り入れることは、単なる装飾以上の深い意味を持ち、読み手の心に直接届く力を秘めていることを感じさせます。
今回は、手書き文字の持つ魅力をあらためて解き明かし、冊子づくりにおける効果的な活用法についてご紹介していきます。 手書き文字は、単なる情報伝達の手段を超えた、感情を伝達する力も持っています。
その文字は書き手の内面を反映し、例えば丁寧な筆の運びからは真摯な気持ち、対象への敬意が伝わってきます。
それが軽やかなものであれば、リラックスした雰囲気や親しみやすさを感じるでしょう。
また大きく力強い文字は情熱や自信を、細く小さな文字は慎重さや繊細な感情を表現しています。
皆さんも、結婚式の招待状に添えられた手書きのメッセージを見たことがあるかもしれません。
あるいはご自身が実際に手書きのメッセージを添えた経験をお持ちなら、新郎新婦の緊張と喜び、愛情が文字そのものに込められたと感じたのではないでしょうか。
人間の脳は、完璧に整えられたものよりも、わずかな不均一さや個性的な表現(「ゆらぎ」と呼ばれることもあります)に強く刺激を受けることが知られています。
自分自身で意識する以上に、人間の視覚システムはパターンの微妙な変化に敏感に反応するわけです。
そういった点からも、均一な質感を持つデジタルフォントよりも、手書き文字は脳の注意を引きやすく、長期間記憶に刻み込まれやすいと言えるでしょう。
このように、手書き文字は、そこに書かれた言葉以上のメッセージを伝達する力を持っているわけです。
デジタル時代だからこそ、文字の形や筆圧によって書き手の誠実さや丁寧さなど、言葉では表現できない感情を伝える、そんな手書きの希少性と価値が注目されているのかもしれません。
では、印刷物に手書き文字を活用することにどのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。
まず、ブランディングにおける差別化戦略において、手書き文字は強力なツールとなり得ます。
皆さんの身の回りでも、カフェの季節限定メニュー黒板やクラフトビールのラベルデザイン、地元のパン屋さんのPOPディスプレイ、インディーズ・アーティストのアルバム・ジャケットなど、多くの場面で手書き文字が使われています。
これらの事例に共通するのは、人間らしい温かみを伝えようという意図を持っていることです。
手書き文字は「誰かが心を込めて書いている」と、商品やディスプレイの向こう側にいる「人間」の存在を強く意識させ、個人的で親密な感情的つながりを喚起します。
この効果をどのように活用できるのか、業界別に見ていきましょう。
1)飲食業
メニューへ手書きのコメントを添えることで、料理への愛着を表現したり、メニューの独自性をアピールできます。
お店やシェフの思い、料理へのこだわりを伝えるツールとなります。
2)美容・理容
施術内容を手書きで説明することでリアリティーを感じさせ、信頼感を高めることができます。
また、お客様へのパーソナライズされたメッセージによって、施術の特別感を演出することも可能です。
3)教育・学習支援
教材に手書き要素を入れることで、生徒の注意を促します。
教師や講師の熱意や個性を反映した手書き文字は、生徒との感情面でのつながりを生み出すことも期待できます。
4)小売・EC
お互いに顔が見えずドライな取り引きになりがちなネット販売の中にあって、納品物に手書きのお礼カードを添えることで、顧客との絆を深めることが可能になります。
マニュアルなどにも手書き文字による温かみのある説明を追加すれば、ブランドの人間味を演出できるでしょう。
ここまで手書き文字の効果についてご紹介してきましたが、もちろん手書きであれば何でもよいということではありません。
手書き文字の効果を最大限引き出すためのポイントを知っておきましょう。
まず必要なものが、リアルな手書き感を追求することです。
過度に整えすぎず、自然な筆の運びを意識しましょう。
また「○○風」「誰それ風?」ではなく、書き手の個性が伝わるものでなくてはいけません。
読みやすさとバランスも重要です。
いたずらに芸術性にこだわるのではなく、可読性との調和が大切です。
情報を明確に伝えなければならない場面であれば、文字サイズや行間などにも注意しましょう。
また、これは手書き文字に限らないのですが、目的に応じた文字スタイルを選択するよう心がけてください。
例えば、高額商品を扱っているのにポップな手書き文字を添えたりすると、ブランドに対する信頼感を損ねる恐れがあります。
手書き文字だからといって、アナログにこだわる必要はありません。
デジタルツールも賢く活用していきましょう。
手書き文字をスキャニングしてDTPアプリケーションに取り込み、さらにパソコンのキーボードに振り分けることも可能です。
これによって文字そのもののクオリティーに一貫性を持たせることができるわけです。
このように手書き文字には、言葉に人間らしい温もりを与え、作り手の個性を想起させる力があります。
積極的に手書き文字を取り入れることで、あなたの作る冊子をより生き生きと心に響くものにしてください。
手書き文字を使った原稿づくりでご不明な点がありましたら、何なりとお問い合わせください。
無線綴じ(くるみ綴じ)・中綴じ冊子で長年の経験を持つ、冊子印刷ドットコムのベテランスタッフがお待ちしております!