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旅行記づくりのヒントは過去の名作に

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夏休みシーズンに向けて、国内・国外問わず旅行に関する話題を耳にする機会も増えてきましたね。せっかく旅行に出かけるなら、素敵な思い出を冊子にして、いつでも振り返ることができるようにしておきませんか?


そうはいっても、「じゃあ、どんな文章を書けばいいんだろう?」「私って文才ないし……」って戸惑っている人も多いかと思います。今回は古今東西、数多くの旅行記の中からおすすめのものをピックアップしてご紹介したいと思います。旅の思い出を何倍も豊かにし、その喜びを多くの人に伝えるために、ぜひ参考にしていただければ幸いです。 そもそも「旅行記」は「紀行文学」の一部であり、旅程や訪問した場所、行く先々で見聞きしたこと、体験したことなどはもちろん、 訪れた土地の自然風景や街並み、建造物などが詳細に描写されるものです。さらに旅先の歴史的背景や文化、習慣や伝統といったものや出会った人々の印象やそこで交わされた会話、生活ぶりなども描かれます。


さらに、旅先での非日常的な体験や危機的状況、ハプニングなどが盛り込まれる場合もあり、旅を通して得た発見や気づき、旅先で巡らされた思考や哲学的考察などが彩りを添えていきます。


もちろん、ガイドブック的な交通手段や宿泊施設、名物料理などの観光情報も重要ですが、読み物として魅力的なものを目指すのであれば、やはり旅の情景や情緒を詩的に描く部分に比重が置かれることになるでしょう。


紀行文学の起源は非常に古く、何と紀元前から存在すると言われています。例えば、古代ギリシャやローマ時代には、旅行者による地理的記録が書かれていましたし、ヘロドトスの『歴史』や、紀元前5世紀のクテシアスによる『インディカ』など、当時の世界の様子を今に伝える旅行記録が現存しています。


中世に入ってからも、修道士や商人による紀行文が書かれました。特に有名なものがマルコ・ポーロの『東方見聞録』で、13世紀に行われた東洋への旅をまとめたこの名著をお読みになった方も多いのではないでしょうか。


日本でも同様に、紀行文学は古くから存在していました。『古事記』『日本書紀』には旅を連想させるモチーフが登場し、『万葉集』にも旅先の地名や詠み手の感情が込められた歌が収められています。平安時代初期には、円仁の『入唐求法巡礼行記』、円珍の『行歴抄』、成尋の『参天台五台山記』といった作品が記されましたが、これらが現在の紀行の前身だと言われています。


一般的には、平安時代の紀貫之の『土佐日記』から日本の紀行文学が始まったとされていますが、この時代の『蜻蛉日記』『更級日記』にも旅の記録が含まれています。鎌倉時代に入ると参詣の流行を受けて『高倉院厳島御幸記』『後鳥羽院熊野御幸記』『伊勢記』などの紀行文が登場します。京都と鎌倉を行き来する文化人が増えたこともあり、和漢混じり文体の『海道記』『東関紀行』なども現れた。


南北朝時代や室町時代には、社寺参詣や名所旧跡を訪ねる、現在の観光に近い旅が盛んになり、数多くの紀行作品が誕生しました。戦乱や大名の興隆が文化人の移動に影響を及ぼしたとも考えられます、江戸時代になると旅行が容易になり、さらに多くの紀行文が生まれていきます。その特徴は、旅の実態を詳しく伝え、主人公の内面の変化を描くなど、現代の旅行記に近いものになっていきます。


このように、紀行文学は長い歴史を持ち、旅の記録を通して当時の風俗や文化を伝える重要なジャンルとなっているわけです。


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さて、現代の旅行記として個人的にぜひご紹介したいものが、日本中のバックパッカーのバイブルとさえ言われた、沢木耕太郎の『深夜特急』です。これは沢木耕太郎自身が1970年代に体験した旅の記録が元になっていて、1986年から1992年にかけて刊行されました。


インドのデリーからロンドンまで、陸路と海路を使って旅する中で経験した出来事や人々との出会い、そして各地の風景や文化が生き生きと描かれていて、まさに先ほどご紹介した「紀行文学」の典型的な内容になっています。


『深夜特急』が今もなお多くの人に読み継がれているのは、それがただの旅行記にとどまらず、自己発見と成長の物語でもあるからです。筆者の目を通して描かれる、各国の人間模様や文化の違いは、読む人の感性を刺激し、彼の旅を追体験させてくれる力を持っていると言えるでしょう。


また、よしもとばななの作品にも優れた紀行文が多く含まれています。中でも『マリカのソファー・バリ夢日記』『SLY(スライ) 』『不倫と南米』の、現実と虚構を自由に行き来するストーリーテリングは見事としか言いようがありません。まるでその場にいるかのような湿度や匂いをイメージさせる言葉の数々、ぜひ体感してほしいなと思います。


その他にも、登山家・写真家としても有名な石川直樹の『最後の冒険家』、高野秀行の『恋するソマリア』など、まだまだ紹介しきれないほどの名著がありますので、ご興味がありましたら、ぜひお読みいただきたいなと思います。


そして、出来上がった旅行記は、無線綴じ(くるみ綴じ)製本中綴じ製本に関する長年の実績が自慢の冊子印刷ドットコムで冊子として仕上げ、多くの皆さんの元にお届けください。ご不明な点はベテランスタッフがお答えいたしますので、何なりとお問い合わせください!

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