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色のイメージは十人十色

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「男の子」という言葉を聞いてイメージする色は何ですか?やっぱり青ですか?
では、「女の子」という言葉から連想する色は?多くの人は「ピンク」と答えるのではないでしょうか。


「ジェンダーレス」という意識が浸透してきたとはいえ、このように言葉に対する色のイメージはある程度固定化されているのが現状です。この事実を少し視野を広げて海外にも向けてみたらどうなるでしょう? 今回は、まさに「十人十色」とも言える、色とイメージの関係についてご紹介していきます。印刷物のみならずファッションやWEBサイトなど、視覚を通した表現に関わる際には覚えておきたい知識ですので、ぜひ最後までお読みください。


私たちは様々な情報を五感を通して受け取っているわけですが、この中でもデザインや文字に関しては視覚を通して得られる情報が重要であることは言うまでもありません。特に色という要素はイメージの形成に欠かせないものとなります。


もし私たちが色という情報を受け取ることができなければ、日常生活に支障をきたすことも考えられます。例えば、肉や魚、果物や野菜といった食べ物の鮮度、あるいは顔色などの人の健康状態を判断することが難しくなります。


こういった、色に関する理論や原理、心理的・生理的影響などを研究するのが「色彩学」と呼ばれる学問分野です。色そのものはもちろん、色の表示方法や色と知覚・心理の関連、そして今回のテーマと関連のある、色が与える印象、色と文化、色の象徴的意味、色の嗜好の違いといった、幅広い分野を研究しています。


日本では1965年に設立された日本色彩学会や、1942年に設立された色彩研究所(日本色研構造調色研究所)などの学術団体や専門研究機関が情報交換の場を提供し、色彩関連の調査研究、コンサルティング、教育などを行っています。この他にも各大学の芸術学部や心理学部をはじめ、企業内の研究部門など様々な場所で研究が行われており、いかに色というものが人間生活に深く関わっているかが分かります。


小難しい話はここまでにして本題に入りたいと思いますが、その前に大事なお話を1つ。色の知覚には個人差があります。私たちが一口に「赤」と言っている色、もしかすると誰にとっても全く同じとは言えないのです。


色の知覚における個人差には生理的要因と心理的要因があります。生理的要因とは色覚の機能によってもたらされるもので、例えばいわゆる「老眼」など、年齢とともに視力は低下することは知られていますが、この他にも青と灰色の区別が困難になる、光の明るさに対する順応がしにくくなることなどが知られています。


これに対して心理的要因というものは、子どもと大人、専門家と一般ユーザーなどといった関係の中で見られる、いわゆる「経験の差」によってもたらされるものです。子どもと大人では色を評価するボキャブラリーが違いますし、専門家と一般ユーザーでは色の微妙な差異に対する敏感さやこだわりといった部分に違いが生まれます。


これはデザインに携わっている方なら誰でも体感しているのではないでしょうか。例えば、クライアントにプレゼンしたロゴの赤色に対して「もうちょっと暗くしてほしい」と言われた場合に、青を混ざるのか黒を混ぜるのか、あるいはそれぞれの配分によって結果は違ってきます。「暗く」という言葉をどう解釈するか、どんな赤色を求めているのか、それを判断するのがデザイナーの腕の見せどころなわけですが、同時に、永遠に分かり合えない溝も意識せざるを得ない瞬間でもあるのです。



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例として赤色を取り上げましたので、世界各国で赤色が親しまれている国を挙げていきましょう。これは武蔵野美術大学造形学部教授の千々岩英彰氏の研究を元にしていますが、「最も親しまれてきた色」として赤を選んだのは、日本、中国、台湾、シンガポール、カナダ、アメリカ、ロシア、などです。これに対して緑を選んだのはブラジル、ポルトガル、イタリア、オレンジを選んだのはオランダ、インドなどとなります。


これを見て、いくつかの共通点に気がつきませんか?この「最も親しまれてきた色」、実は国旗の色との関連性があるのです。また、キリスト教国では青や青紫、仏教国ではオレンジや黄色が上位にくるなど、宗教やイデオロギーとの関連も深いと言われています。


また、色から連想される言葉にも特徴が見られます。これは同じく千々岩教授の研究によるもので、日米の学生に色から連想される言葉を答えてもらったものです。


共通するものとしては
黒=死、夜、殺人
灰=退屈、落胆
緑=自然
赤=情熱、活動、愛情
青=信頼、科学
茶=男性、父、職業
など、言葉は違えども似たようなイメージで捉えられているようです。


これに対し特に違う結果になったのが
白=平和(アメリカ):看護師(日本)
黄=嫉妬・嫌悪(アメリカ):冗談・児童(日本)
の2色です。
どちらも互いの言葉は上位10位にも入っておりません。


日本では「白衣の◯◯」のように、看護師の制服=白というイメージがあるようですが、アメリカの人気医療ドラマ『ER』を見ても分かるように、アメリカでは白い制服はほとんどありません。日本でも次第に色付きの制服が普及していますので、このイメージは時代とともに変化していくかもしれません。


また、アメリカで黄色が嫉妬や嫌悪をイメージさせるのには、1940年代のユダヤ人迫害の際に黄色い記章を着用することを強制された歴史が背景にあると言われています。


このように、色から連想されるイメージや意味合い、好みについては民族・文化・宗教・思想などが密接に結びついているわけです。このような背景を理解することで、伝えたいイメージをより正確かつ効率的に届けることができるようになります。


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