意外と使える「マーブル巻き」
タブレットやスマホを使ったオーダー方式の普及で、最近ではだんだんと見かける機会が減ってきましたが、クリーニング店や喫茶店なんかで、束ねた紙を糊で綴じて、背の部分を模様の入ったテープでカバーした手書きの伝票などを見かけたことはありませんか?
あれ、「マーブル巻き」と呼ぶんです。その名の由来はマーブル模様、つまり大理石のように数種類の色が練りこまれたような柄の紙=マーブル紙が使われていることからきています。 マーブル紙の起源は古く、1600年頃にオリエント地方からトルコ経由でヨーロッパに持ち込まれ、フランスとイタリアに定着したと言われています。当時の重厚な書物には、現代の私たちから見ても見事なマーブル紙が使われています。 マーブル紙は書物の本文と表紙をつないで補強するとともに、書物を装飾するという製本上重要な役目を果たしていました。
マーブル模様の技法は、日本や中国で多く見られる「墨流し」という手法がもとになったという説もありますが、当時使われていたマーブル紙はマーブリング技術(子どものころ、図工の時間にやったことのある人もいらっしゃると思います)を習得した専門の職人によって手作業で作られたものでした。
かつては「フランス紙」と呼ばれるほど、フランスで流行しましたが、製本技術の向上やコスト面から、時代とともに廃れていきました。現在はイタリアのフィレンツェの伝統工芸として根付いていて、イタリア土産として人気があるのはもちろん、ファッションやアートの世界でもしばしば取り上げられています。
日本でも、明治初期には書籍や帳簿に使われるようになったという記録が残っています。当時はヨーロッパの書物と同じように小口面(紙の断面)にマーブル模様が施されていましたが、ページの抜き取りによる帳簿の改ざんを防ぐという目的があったようです。また、帳簿を製作する製本職人の中には、マーブリングの技術を学ぶために本場であるフィレンツェを訪れた方もいらっしゃったようです。
その後、小口面にマーブル模様を施した書物はだんだんと姿を消していきますが、マーブル模様が印刷されたマーブルテープを使った「マーブル巻き」と呼ばれる製本方法が登場します。
なぜこの製本方法にマーブル紙を使うようになったのかは諸説ありますが、かつての改ざん防止というよりは、補強と装飾という意味合いが強かったようです。
冒頭でも書いたように、最近はあまり姿を見かけなくなったマーブル巻きですが、その特徴あるレトロ感が話題となり、数年前には文房具を中心にちょっとしたリバイバル・ヒットも生まれています。
かつては、手作業によって一冊一冊にマーブルテープを貼っていましたが、現在はそのほとんどが機械化され、ロール状のマーブルテープに水を付けながら製本する方法に変わっています(今でも極小ロットの場合は手作業で行なう会社もあるそうです)。
よく似た製本方法に「天のり」と「クロス巻き」があります。「天のり」は「糊固め」とも呼ばれ、マーブル巻きの表紙・裏表紙を省いたものとなります。表紙・裏表紙がない分、マーブル巻きに比較して、より低コストでの制作が可能です。
「クロス巻き」はマーブルテープの代わりにクロス(布)テープを用いることで、マーブル巻きよりも強度がアップしています。こちらは同じ伝票類でも、ある程度保管期間が必要なもので多く使われている製本方法です。
マーブル巻きが用いられる印刷物として、日報や伝票(複写ではないもの)やメモ帳など、切り離して使う機会が多いものが挙げられます。冊子としての耐久性は高くないので、長期保存を目的とした印刷物に使われることはほとんどありません。
よくある伝票類以外に、マーブル巻きにはどんな使用法があるのかなと考えてみたのですが、例えば文化祭などの模擬店の食券、イベントやパーティーのチケットなどはいかがでしょうか?ほかにも、日めくりカレンダーやオリジナルの便箋というのもいいかもしれません。
さらに、自分のペンネームの入った原稿用紙を作れば、ちょっとした文豪気分も味わえるかも…。サイズや体裁も自由に設計できるので、よくある400字詰めではなく、俳句や短歌専用にカスタマイズすることも可能です。
ほかにも、オリジナルの五線紙を作れば、外出先で思いついたメロディーをササッと書くことができますよね。
こんなふうに、伝票だけでなく様々な用途に応えられるのがマーブル巻きです。冊子印刷ドットコムなら、オプション加工でミシン目を入れたり穴あけをすることもできますので、用途に合わせた加工がお選びいただけます。
ほどよいレトロ感が見る人の気持ちを温かくし、オリジナルのデザインで個性も発揮できる、そんなマーブル巻きを使ったものづくりにチャレンジしてみませんか?
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